京都市以外のグルメ情報を拡充する企画として、これまで亀岡市・宇治市・舞鶴市とタウン特集のコーナーを設けてきた。今回はその第四弾として、丹波の城下町福知山の味を巡ろうと思う。
福知山市は京都府中部から北部にかけての広い地域に位置する、人口約8万人の、丹波の中核都市の一つである。戦国時代、丹波を平定した明智光秀が福知山城を築城し、その後、近世は基本的に朽木氏の城下町として栄えた。
福知山市は、ある意味、不思議な町である。観光資源がないわけではないが、いわゆる観光地ではない。近代は繊維関係の産業が発展し、昭和後半からは長田野工業団地が整備されて工業都市としての性格を持つようになった。都市部は西側の京都と雰囲気が似ている旧城下町と東側の長田野工業団地とその周辺の住宅地から成る。
福知山は、JR山陰本線・国道9号線で京都市とつながり、JR福知山線によって兵庫県尼崎市そして大阪中心部や神戸市とつながっている。とは言え、山陰本線・福知山線とも、それぞれ京都市へ約2時間、大阪市へ約2時間かかる。9号線を使って車で移動しても、京都市へ約2時間かかる。隣接する宇治市・亀岡市などが京都市に20〜30分ほどのアクセスであることと比較して、福知山市がいかに京都中心部から遠いかがわかる。丹後地方のような大観光地ならばこの程度の距離は逆に旅の楽しみにもなるが、福知山の場合はこの距離感は隔絶感となり、商用以外の目的で京都市や阪神地域からわざわざ福知山を訪れる人は少ないのではないだろうか。
物理的な遠さは、心理的な遠さでもある。この町が不思議という所以は、外からあまり人が入ることがない、隔絶性にある。外部の人間にとって、福知山は不思議な町、謎の町なのである。その地理的条件から、福知山市は、JRでわずか10分余りという綾部市、JRで30〜40分ほどの舞鶴市、あるいは兵庫県の豊岡市などの三丹地方(丹波・丹後・但馬)で、京阪神とは異なる独自の経済的・文化的・人的な地域圏を形成しているようである。
それでは、福知山はわざわざ足を運ぶに足りない都市なのか、と言えばそうではない。グルメという観点から見た時、福知山はとても豊饒な都市である。都市の規模からすると、福知山には驚くほど美味しいお店や食べ物があふれている。関西の大都市圏からの遠さということとも関連するのか、それともこの地域の人々が食いしん坊なのか、福知山には、老舗も多く、福知山ならではのご当地グルメもあり、様々なジャンルの新しい店も続々と生み出している、生産力の高い飲食店文化がある。
福知山は、まず何と言ってもスイーツの町として有名である。菓子店、喫茶店、ベーカリーなど多数のスイーツ店があり、この小さな都市にバームクーヘン、揚げパン、パイなどマイナーなスイーツの専門店までがあるのは、さすがスイーツの町と思わせる。行政や商工会などもスイーツに関しては全国トップレベルを自認しており、スイーツでまちおこし、地域振興も行なおうとしている。今年平成25年5月19日には、市厚生会館で第1回「丹波福知山スイーツ・スプリングフェスティバル」が開かれた。福知山はいわゆる観光地ではないと述べたが、スイーツ観光で人が集まってくるという展開はこれから充分にあり得る。
スイーツだけではなく、主に四川料理文化が定着している中華料理店や、伝統的なタイプの洋食屋が多いことも見逃せない。ハイクオリティな中華料理店や洋食屋の軒数は、同じ丹波にあって福知山より少し人口の多い亀岡を完全に凌駕している。これは亀岡市民がすぐ近くの京都市内に気軽に食べに行けるために多くの飲食店がそれほど必要ではないのに対して、内陸の孤島である福知山は、和食・洋食・中華にイタリアンや各国料理まで含めて、オールジャンルの自前の飲食店が必要であるということがあるのかもしれない。いずれにしても、こんな小さな都市に水準以上の中華料理店がひしめき、洋食屋や西洋料理のレストランが何軒もあるという状況は、感動的である。スイーツや中華、洋食だけではなく、どのジャンルの飲食店でも美味しい店に当たる率が高い。
このように、ざっと概観しただけでも、福知山グルメの魅力の一端を感じてもらえたことと思う。
福知山市は平成18年(2006)1月1日には大江町・三和町・夜久野町の3町を編入合併して、南丹市や京丹後市と同様の広い市域を有する自治体になっている。この特集では旧城下町とその周辺の住宅地を中心に取り上げるが、これから徐々に旧大江町・三和町・夜久野町方面へも足を伸ばしていきたいと思っている。
言うまでもありませんが、この特集に取り上げているのは、福知山グルメのごく一部です。今後少しずつ充実させて行きたいと思っていますので、福知山の美味しい店の情報があれば、ぜひお寄せ下さい。本特集の情報を、地元の人はもとより、観光客や周辺地域の方々に利用して頂ければ幸いです。